岡ノ谷一夫

私たちはここ数百年で多くの生物を絶滅させてきた。ウミガラスやステラ海牛を食べ尽くした。しかしそれはまだ序の口だった。地理的隔離により増大した生物多様性は、グローバル化による病原体混入により失われつつある。固定された二酸化炭素化石燃料として放出され、温暖化のみならず海水の酸化をまねく。これらの要因が、6度目の大絶滅を引き起こしており、私たち自身も絶滅危惧種なのだ。絶滅を避ける対策について著者は語ろうとしない。私たちの存在記録は、奇異な物質を含んだ薄い地層として残るのに過ぎないことを、著者は悟っている。

 

本書の扉には、社会生物学者として著名なE・O・ウィルソンの言葉がある。「人類の心をとおして己を理解したまさにそのとき、生命は自らのもっとも美しい創造物をすでに破滅の淵(ふち)に追いやってしまっているのだ」。私たちはいずれ絶滅するであろう。私の願いは、せめて己を理解するまでの時間が人類に与えられることである。

 『6度目の大絶滅』 エリザベス・コルバート著

 

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