養老孟司 - 街頭に舞い散る言葉HB

去年「複雑系」というのが流行ったでしょう。あれもアメリカからだけど、ぼくら日本人から見れば、昔から言われていることと重なる部分も多いんです。やっとアメリカ人がコンピュータの力を借りて、いままで放ってたことに気づいたのかって言っているんですね。

（…）わかると思っていた未来がそもそも錯覚だったわけでしょう。これまではなんでも予測できると思ってきた。ああすればこうなるでやってきたんですね。でも現実にはああしてもこうならないことってたくさんあるでしょう。だからこそ「手入れ」をするんです。完全に思ったように管理せず、自然そのものでもなくて、その中庸に納める。

『虫眼とアニ眼』（p89-90）