アンソニー・アトキンソン

前章で述べた通り、再分配では得をする人だけでなく損をする人もいる、というのは再分配に反対するまともな反論ではない。政府が本気で不平等を減らしたければ、どうしてもトレードオフは生じる。これは容易なことではない。トーニーが論説『平等論』で述べたように「不平等は流れに身を任せる以上のことを要求しないので簡単だが、平等は流れに逆らうことなのでむずかしい。(中略)それには代償と負担が伴うのだ」。

 

そのむずかしさは二つの形をとる。個人のレベルでは、それは「一部の人には物質的な犠牲」をもたらす。税金が引き上げられることを受け入れてもらわねばならない。社会のレベルでは、難しい問題に取り組まねばならないということだ。市場プロセスの結果をあっさり受け入れるのではなく、「公平な」分配というのはどういう意味かを検討しなくてはならないのだ。

『21世紀の不平等』

 

参照:『21世紀の不平等』――グローバル化のせいで何もできないか? / アンソニー・アトキンソン / 経済学 | SYNODOS -シノドス- | ページ 2

 

関連:「市場で再分配が可能」という前提を疑え
格差問題の議論を通じて見えた市場の限界/安田洋祐

http://hideasasu.hatenablog.com/entry/2014/05/16/230456