大岡昇平・埴谷雄高

大岡 きみは、転向したことになっているけれど、昭和三十二年の少し前からスターリン批判をやり続けていたわけだな。

埴谷 もちろん転向してるわけだ。いわゆる社会革命の重要性というのが非常に小さくなって、人間全体、存在全体を革命しなきゃならないというような妄想になってきているんだけど、端っこのほうにやはり社会革命への情熱がまだ残っているわけだから、ムラムラッとするんだよ。革命をやってるやつがまったく逆の革命の阻害者になるわけだから、もうどうしようもないと思ってね。

大岡昇平埴谷雄高 二つの同時代史』329項