池田晶子

自由意志か宿命か、などの問題が、変わらずに人類の論争の火種であり得るということ自体が馬鹿馬鹿しいのだ、答えなんかないんだから。私は、こういう繰り返し哲学史上に現われる論争を見るにつけ、何かこう、もの哀しいような気持ちになる。ほんとうに人類は馬鹿にされていると思う。誰に? と問い返せないところが馬鹿にされているのだ。

『考える人』