ニーチェ

苦悩を求める欲望。――みながみな退屈に耐えられず自分自身に我慢できなくなっている行く百万という若いヨーロッパ人を、たえずくすぐったり刺戟したりするところの、何かをしたいというあの欲望のことに考えおよぶとき、――自分たちの苦悩から行動や行為のためのもっともらしい理由を取って来ようとして、何かに悩もうとする欲望が、彼らの内にあるに相違ないと、私は思う。困窮が必要なのだ! だから政治家たちはわめき立てるし、だからまた多数の偽った架空の誇張された、ありとあらゆる階級の「困窮状態」といったものと、それを喜んで信じようとする盲目的な気構えとが、つくりだされるのだ。こうした若者たちは、外から――幸福なんかではなく――むしろ不幸が訪れるか出現するようにと、熱望する。

 『悦ばしき知識』