洪自誠

静中の静は真静にあらず。動処に静にし得来たりて、纔(わず)かに是れ性天の真境なり。楽処の楽は真の楽にあらず。苦中に楽しみ得来たりて、纔かに心体の真機を見る。

静かなところでしか保てないような心の静けさは、ほんとうの静けさではない。目まぐるしいところでも心を静かに保つことができるようになってこそ、本性の真の境地である。また、安楽な環境の中でしか感じられないような心の楽しみは、ほんとうの楽しみではない。苦しい環境の中でも心を楽しく保つことができるようになってこそ、心の真の働きを見ることができる。

『菜根譚』(p.108)

 

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