渡辺政隆

今から150年前、ダーウィンは満を持して『種の起源』を世に問うた。その書では、当時の人々が密かに恐れていた宣告が雄弁に語られていた。すなわち、「ヒトはどこから来てどこへ行くのか」という問いかけとその答が。
種の起源』以後、ヒトは神の祝福を受けて創造された後に智慧の実を食べたせいで楽園を追われた存在であるという優越的なメッセージは拠り所を失ってしまった。
ダーウィンの答は、「ヒトはすべての生きものと同じ祖先から来て、どこへ行くとも知れない」だった。不安なメッセージととるのはたやすいが、可能性は無限に広がっているという見方もできる。

『ダーウィンの夢』(p.218)

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