小林秀雄

科学主義というものは一と口で言えば、問題を解決する事を知って問題を提出する事を知らぬ一面的な批評主義だ。あらゆる文化は社会的等価関係の下で並列し、歴史的必然の下に進行するという包括的な世界観さえ抱いていれば、どんな質問にでも返答が出来るという狭隘な信仰主義である。

(「文芸批評の行方」/『小林秀雄全作品9』230項)