戸部良一 他

組織が継続的に環境に適応していくためには、組織は主体的にその戦略・組織を環境の変化に適合するように変化させなければならない。このようなことができる、つまり主体的に進化する能力のある組織が自己革新組織である。

適応力のある組織は、環境を利用してたえず組織内に変異、緊張、危機感を発生させている。あるいはこの原則を、組織は進化するためには、それ自体をたえず不均衡状態にしておかなければならない、といってもよいだろう。不均衡は、組織が環境との間の情報やエネルギーの交換プロセスのパイプをつなげておく、すなわち開放体制(オープン・システム)にしておくための必要条件である。完全な均衡状態にあるということは、適応の最終状態であって組織の死を意味する。逆説的ではあるが、「適応は適応能力を締め出す」のである。

均衡状態からずれた組織では、組織の構成要素間の相互作用が活発になり、組織のなかに多様性が生み出される。組織のなかの構成要素間の相互作用が活発になり、多様性が創造されていけば、組織内に時間的・空間的に均衡状態に対するチェックや疑問や破壊が自然発生的に起こり、進化のダイナミックスが始まるのである。

 『失敗の本質 日本軍の組織論的研究

 

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