ジョン・ロールズ

社会制度の秩序につねに欠陥があるのは、生まれつきの才能も違えば周囲の環境も違うという事態が不公正だからであり、この不公正さが人びとの境遇に必然的に引き継がれてしまうからである、という主張がある。だが、こうした主張を受け入れるべきではない。このような考え方は、折に触れて不正を見逃す口実となっている。まるで不正を黙認するのを拒むのは、死を受け入れられないのと同じことだとでもいうように。自然による分配は公正でも不公正でもない。人が社会の特定の場所に生まれることも同じだ。どちらも自然の事実にすぎない。公正か公正でないかは、組織がこうした事実をどのように扱うかによって決まる。

『正義論』


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