司馬遼太郎

日本人はどうも、社会を壊してしまうことはいけないことだ、と思っているようなのです。そして、社会を組みあげていくことが正義だと思っているらしい。一つの社会が壊れたら、すぐに新しい社会を組みあげていきましょう、ということがある。新しい社会ができると、立場立場で非常に不満はあるけれども、作ることに正義を感じて妥協してしまう。福島正則加藤清正も豊臣家への不忠の臣として語られていません。徳川体制をつくる上での有力な協力者だったという“正義”の上でかれらのモラルは浄化されています。

『手掘りの日本史』118項