松尾豊・海猫沢めろん

――なるほど。もう一方の「知能とはなにかを考える」というのは、具体的にどういうことを考えているんでしょう。

 
松尾 いろいろな考え方がありますが、例えば、知能を「外から見た振る舞い」として考えると、段階的に、こう定義できるかもしれません。

 

レベル1のAI 単なる制御(簡単なルールにしたがってやる)

 

レベル2のAI 対応のパターンが多い(複数のルールを組み合わせてやる)

 

レベル3のAI 対応のパターンを自動的に学習(教えられた着眼点で上手いやり方をみつける)

 

レベル4のAI 対応のパターンの学習に使う変数字体も学習(着眼点も自分で見つける)

松尾 要するに外界の状態で振る舞いが変わるものは、ある意味で「賢い」わけですから、みんな人工知能と言おうと思えば言えるんです。洗濯機とか髭剃りも、洗濯物とかひげの状態で振る舞いが変わるのであれば人工知能。レベル2になると、外界の状態に自ら応じて対応できるんだけど、それは、中でいろいろ推論したり、埋め込まれたいろんな知識によって反応が賢く変わる。レベル3はいわゆる機械学習で、こういうところに注目し、外界をセンシングしてこういうふうに動くといいんだよという例をたくさん覚えさせて学習させることで、さらに多様な反応ができる。レベル4になると、変数自体を見つけられるようになる。今まではこのレベル4がずっとできなかったんですね。

 

――それができるようになってきた?

 

松尾 そうですね。今まで人工知能ではいくつか難しいとされていることがありまして、50年研究してもなかなか進まなかった。レベル3以上に進めなかった。それが今、ディープラーニングというテクニックによってレベル4に少し手が届き始めてきた段階なのです。

 

――それによって人工知能に今注目が集まっているんですね。ビッグデータとディープラーニングの二つの要素によって、人工知能のブレイクスルーが起きたと聞いたことがあります。ディープラーニングについては、ニューラルネットワークを活用した、新しい機械学習のテクニックだというのは石黒浩先生にも聞いたんですが、具体的にはどうすごいんですか?

 

松尾 特徴量を取り出す――つまり、機械が得たデータの中から何を概念として取り出すべきかっていうのを機械が自分で計算できるようになったのが、ディープラーニングの功績です。世界から何を抜き出すか、を選びとることは、これまで人間しかできなかった。それがコンピュータもできるようになってきたんですね。

 人工知能って……そもそもなに!?―― 人工知能の真実 vol.1

 


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