荘子

上古の真人は、生を喜ぶことを知らず、死を憎むことも知らなかった。この世に生まれ出ることを喜ぶでもなく、死の世界に入ることを拒むこともない。ただ悠然として行き、悠然として来るだけである。生の始めである無の世界を忘れることはないが、さりとて生の終わりである無の世界だけを求めることもない。あたえられた生は喜んで受けるが、これを返すときも未練を残すことがない。

 荘子』(大宗師編)/森三樹三郎『老子荘子』より